親孝行

同年代か少し年上なのだろうか。
母子二人暮らしの女性は、今冬の雪で老朽化した借家が壊れ3月には出なければならなくなった。
運よく市営住宅が当たり、急遽不用品処分のお見積りとなった。
伺うと、寝たきりの母のトイレ介護中であった。
仕事の後には、アルバイト、その後はお母さまの介護と忙しい。
自身の病気から指の動きも鈍くなっているそうだ。
表情を見れば、その大変さがよくわかる。
本当に大変な経験を続ける人は、少し笑顔なのだ。
悲しい顔をしてもどうにもならないから。

長年の物量がかなり多い。
忙しさから片付かない放置品も大量となっている。
心配になって、「ご予算は、おいくらぐらいですか?」と聞くが
分割にしても、どうにか支払う覚悟のようだ。
おもいきってお安くして、ご依頼者が自身で対応しようとしていた作業も受けることにした。
どう考えても、ご依頼者ががんばってできそうにはない。
「この金額で、私たちがすべてやろうと思います。」
どうして、そこまで約束したのだろう。
自分ができなかった親孝行を実践している方への敬意。
自分ができなかった罪悪感の軽減。
そんなところだろう。
少し笑顔の表情から、少しだけ涙がこぼれたのは、見ないふりをして家を出てきた。

明日も今できることを一生懸命にがんばるのみ。

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